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フェリックスの旅~覚え書き

 

The Memorandum of Felix’ Journey 

 

 

「フェリックスの旅」をお読みいただきありがとうございます。

 

いくつかの核になるエピソードに肉付けしてすくすくと育った結果、「フェリックスの旅」はなんとびっくり、結構な長さのお話になりました。

「未来の話だし、フェリックスのことに興味があるファンっているのかな?」、と思いつつも、衝動に任せて書いたお話でした。

しかし、いちファンである私が興味があるってことは、他にも銀英伝のその後、特にフェリックスはどうしただろう、ということにご興味がある方がいるってことなんですな。手ぐすね…、じゃない、期待して続きを待ってくださる方がたくさんいらっしゃって嬉しいことでした。

ここでは参考までに「フェリックスの旅」の補完情報などを集めて、このお話のあとがきに代えたいと思います。

 

 

*「新帝国暦25年」

フェリックスは大人でもない、子供でもない23歳と設定しました。どうも、23歳とは作者の創作意欲をくすぐる微妙なお年頃らしいです。

自分、この年齢の時になんかあったんでしょうか。学校を出て就職して、環境が変わって…というお決まりのパターンではあっても、結構いろいろ大変な時期だったと思います。別に自分の恨みつらみを小説に込めたりしてないですが、思い入れのある年代だといえましょう。

 

フェリックス:新帝国暦2年5月2日生まれ

アレックス :新帝国暦3年5月14日生まれ

 

二人とも5月生まれですね…。おそらく年子の兄弟のように育ったのではないかと思います。

このお話でアレックスをどのように登場させるか悩みました。結局、式典での姿をスクリーン上で映し出すだけにしました。

直接登場させなかったのは、この話はあくまで、ロイエンタールの周辺にいた人たちのその後を書きたかったので、他の人たちを含めると手を広げ過ぎになってしまうからです。アレクおよび元帥たちの子供(獅子の泉の子供たち、というあだ名まで考えた)も出したかったな~。

アレク本人とフェリックスが対面する展開を19章辺りで考えたんですけど、そもそも彼は皇帝ですからね。話の流れ的に彼を登場させると大仰になってしまいそうだったので、近衛士官の中尉やランベルツ侍従長に代わりの役割をやってもらいました。

 

かのロイエンタールの副官、エミール・フォン・レッケンドルフはいくつだか正式な情報はないので、マイ設定でロイたんより年下、しかし若すぎない年齢がいいと思いました。退役したのは新帝国暦3年で、その時31歳としました。提督など実戦部隊の士官だったらもっと若くてもいいかもしれない。でも彼は副官だし、高官の副官になるには経験年数が結構必要な気がするので、それなりに年齢を重ねていると。新帝国暦25年には53歳になってます。

…完全なおじさんですね。

ついでに我らがミッターマイヤー閣下は原作最終話(新帝国暦3年7月26日)で誕生日前の33歳。私の話でもぴったり誕生日前なので、55歳です。ミッタンもいい具合の年の取り方しましたな。「5年後に引退する」と言わせましたが、その時にはちょうど60歳か

ところでレッケンドルフはロイたん最期の時点で少佐なんですが、低い地位に感じてしまうのはなぜだろう。原作で確認するまで大佐くらいかと思っていた。みんな若いうちから出世し過ぎだよ。30くらいで少佐なら妥当な昇進速度のはずですが。

 

 

*フェリックスのオーディン滞在カレンダー

これ、カレンダーを見ながら齟齬がないように設定したんです。フェリックスときたら、なつ休みのにっきちょうもつけてたし。サボっちゃったけど。6月は日記の日付があるので省きましたが、以下こんな感じ。

 

7/2(土)パーティー

7/8(金)プレゼン、レッケン宅へ

7/9(土)レッケン宅で朝ごはん

7/14(木)フェリックス家出、レッケン宅で居候

7/15(金)フェリックスとレッケン 初夜

7/16(土)フェリックスとレッケン 一日中

7/17(日)デート 記録を見る

7/18(月)記録を見続ける

7/21(木)ヒルデ図書館で告白

7/23(土)高原の山荘 バカンス

7/26(火)追悼式典

7/27(水)漸次立憲君主制の詔

7/28(木)ロイエンタール邸で発見、祖父母宅に戻る

8月オーディンを発つ

 

二人の蜜月は10日くらいしかなかったんだよなあ…。もう少し一緒にいさせてあげたかったんですが、追悼式典の後はどうしてもフェリックスは母ちゃんのもとに戻る必要があったので(息子としても、ストーリー展開的[コラ]にも)、やむを得ず。これ、レッケンドルフのためにこの期間のお話を作ってあげるべきかも。

 

 

*フェリックス「フォン・ロイエンタール」?

この話を考えたかなり初期の段階では、話の最後にフェリックスに「ロイエンタール」を名乗らせようかと思ってました。ハイネセン行きの搭乗手続きの時に、「フェリックス・フォン・ロイエンタール」と署名する、みたいな…。でも、書いていくうちにそれは全く不要なことだな、と思い直したんです。

家名を継ぐことを重要視するのは非常に日本人的な発想ではないか。特に、父親のロイたん自身、ロイエンタール家に何か思い入れがあったわけではないし、むしろそれを否定していたわけです。しかも、フェリックスが家を継いでロイエンタール家を再興する前に、ロイたん自身がミッタンの力を借りて、「復活」する形になりました。フェリックスがその名前を名乗ることは完全に親の力を借りる形になる。それに、彼を実の息子同然に育てて来たミッターマイヤー夫妻はどう思うだろう? そういう訳で、ロイエンタールの家名にはこだわらないことにしました。

 

 

*なぜ軍人ではないか?

このお話ではフェリックスをロイエンタールの身代わりにしたくない、という思いがありました。父親の跡を継ぐかのように軍人にならなくてもいいのではないかと。そうすることはなんだか、ロイエンタールの呪いでもかかっているようだと思ったのです。ロイたんを息子の足かせや、背後霊みたいな存在にしたくない。それに、フェリックスが将来を考える年齢になったら、父親とは時代が変わっているようにしたい、と。そこで、フェリックスをフェザーンっ子らしく起業させてみました。もともとロイエンタールの父親もそういう才能があったわけだし、隔世遺伝ということです。実のところ、ロイたんにも経営の才能はあったと思うんですがね。

20年後の帝国軍はどうなっているか? 外敵がいなくなってある程度軍縮していると思うのですが、帝国の版図の広大さから言ってそうそう簡単には縮小出来なそうな。まだ獅子の泉の元帥たちも健在ですし(メッキーとケスラーは現役は引退。元帥は終身)、おそらく、軍縮はアレクの仕事になるでしょう。そういう時、ハイネセンから帰って来たフェリックスが、大量に退役した軍人をどうするか、アレクの相談に乗れるといいのではないかと思います。 

 

 

*立憲君主制

よそ様で、ヒルダことヒルデガルドが摂政として立憲君主制を打ち立てる、というお話を読んだことがあります。原作ですでに将来そういう道もありうるという話があったので、当然私のオリジナルではないですが、この辺りの流れは日本の明治時代を参考にしました。「漸次立憲君主制の詔」も同じ名称の詔勅が発布されています。銀英伝の群雄割拠の動乱の時代から開明の時代への流れは、日本の明治維新的だと思っていました。帝国側は薩長か? ちょっと違うけど、同盟側は幕府側に見える…。両陣営の数々の英雄たちは表舞台から消えて歴史になり、生き残った人々が次の時代を作っていく。ミッタンは伊藤博文か? まあ、この見立て方は違うでしょうけど、時代が変わるときとは同じような感慨をもたらすのかもしれません。しかし、とっぷり帝国オンリーのこのサイトでユリアン・ミンツ氏の名前が出てくるとは思いませなんだ。

 

 

*ランベルツ

ハインリッヒ・ランベルツはフェリックスにとって、実父、育ての父につぐ3人目の父親ではないか、と思うのです。いや、むしろ母親的ともいえるだろうか? 一応兄さん、と呼ばせていますが。実父のロイたんから直接フェリックスを託されて、一緒にミッターマイヤー家の猶子になったわけです。彼自身が多感な少年時代からずっと、亡き上官の忘れ形見であるフェリックスを見守り、その健やかな成長に心を砕いてきたのではないでしょうか。

私の考えたランベルツのその後は、ミッターマイヤー家で世話になりながら士官学校に通う。フェリックスを連れてたびたび皇宮に上がって、アレクの面倒を見るゼッレ君と一緒に赤ちゃんたちのお守りをする。その流れでアレクの護衛のようになり、士官学校卒業後は護衛も兼ねた侍従になる。皇帝と母君の贔屓もあって(笑)早くに皇帝の信頼厚い侍従長になる。皇宮ではちょくちょく遊びに来るフェリックスの面倒を見、皇帝の意見などをミッターマイヤーに根回しし、また、ミッターマイヤーを通じて閣僚たちの様子を皇帝に報告する、というような役回りとなったようです。

ところで、フェリックスはロイエンタールを「父」、ミッタンを「父さん」と使い分けています。ドイツ語は分からないので、英語表現でロイたんは「Father」(お父様的な響き)、ミッタンは「Dad」(父ちゃん)。ハインリッヒはまあ「Brother」(お兄さん)になりますが、ちょっと改まった感じ。兄さまに喧嘩を売りたい気分のときは名前を呼び捨てでしょう。

 

 

終わりに

「フェリックスの旅」Memorandum(覚え書き)をここまでお読みいただきありがとうございました。

この「フェリックスの旅」は3つのオマケの短編をご用意しています。それぞれ直接、間接的にフェリックスやレッケンドルフと関わりあっています。

 「初めての人」(拍手お礼ss 2015年7月~9月掲載、後日サイトにアップ予定)

 「皇帝陛下の家庭教師」(掲載済み)

 「日が昇るころ」(掲載済み)

これらのオマケも合わせてお楽しみいただければと思います。

 

 

ハイネセンで勉学に励み、親善大使として活躍するフェリックスのこれからは、どんな日々になるのでしょうか。また、ロイエンタールの伝記を上梓し、ハイネセンへ行くという目的を抱えて、レッケンドルフはこれからどのように過ごすのでしょうか。彼らは無事、再会するのでしょうか。そして…?

その物語は語られることはないでしょうが、おそらくどんなことが起きても、彼らはそれを乗り越えて彼らの人生を精いっぱい生きていくことでしょう。

 

Ende

 

 

 

 

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