二人の新任艦長
16、
『ロイエンタール、どうか怒らずにこのテキストを読んでくれ。本当は直接目を見て話したいが、状況から言ってそれは難しそうだ。
先ほど、レイ将軍とヤンセン医師が争っているところに遭遇して、その時の会話から二人が夫婦だということが分かってしまった。
俺はそれ見ろとは言わん。おまえが知ってて医師と関係したわけではないのは分かっているし、だが、軽率だったのは認めてくれるよな。
俺が言いすぎたのはおまえが自分のことをあまり考えずに、結果だけを考えて行動するのが心配だったからだ。
あんなひどい口を聞く言い訳にはならんが。すまなかった。
とにかく、船団中が二人が夫婦だと知っていて、会わないように策を講じたようなのに、医師は夫に会いに行ったんだ。
実は以前にも1回、二人が会っているところを見ている。穏便な状況じゃない。その時も喧嘩していたんだ。
俺が察するに、医師は夫に会わざるを得ないような状況になっていて、それはおまえと関係しているようなのだ。心当たりがあるか?
なんだか、おまえが全部わかってて、医師とああいう状況になったような気がしてきた。
今、医師はそっちの船に向かっている。おじの船長にすべて話すようにと言い含めた。
もちろん、その話をする時おまえも一緒に聞いていることを期待して。
ついでにその時、おじ上がいてもいなくてもそれは医師の勝手だ。
報告を期待していいかな。
ウォルフ』
『ミッターマイヤー、テキストを見た。
まったく、おれが不倫なんぞにかかわらないように心を砕いてきたことを知っていたら、おまえは安心してくれるだろうな。
ロイエンタールもまだまともなところがあると思ってくれるだろう。それ見ろ、と言ってくれて構わん。
いささか間抜けな立場だが、知らせてくれてありがとう。
そして、おれの方こそ心配させて悪かった。
医師に関してはおれは千里眼じゃないが、気になることがある。最初から彼女は何かおれから情報を得ようとしていた。
一度は軍のIDカードをすり替えていった。
今おれの手元にあるのは偽物で、どうもなにかの信号を発信しているようだが、壊すわけにもいかん。
そのまま放置している。また、他にもおれの端末を盗み見ていったこともある。
それがレイと結びつくとは思わなかったが、あの男に教唆されておれを探っていたのだろうか。何のために?
どうやら医師がやってきたようだ。おじに向かって何か喚いている。
では後で。
オスカー』