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永遠の少年たち ~4~

広場に集まった少年たちは必死で拳を振るう、二人に声援を送っていた。
オスカーがヴァヴェルカの拳を受けて、とうとうよろめいた。足元がふらついたが、なんとか両手で上手く攻撃をガードした。
「オスカー…! こらえて!」
「まだまだ…!」
その時だった。数人の仲間を引き連れたマルティンがみんなの背後に現れた。
「オスカー! みんな! ルーディを救出したぞ!! ノートも無事だっ」
士官学校側の生徒たちはみな、わっと歓声を上げた。実業学校生たちは愕然として顔を見合わせた。
もともと実業学校生たちはルーディの警備にかなりの人数を集めていたが、オスカーが仲間を引き連れて現れたと聞いて、大部分がヴァヴェルカの加勢に行ってしまったのだ。その隙をついて、マルティンが少人数で奇襲攻撃を掛け、ルーディを救出するのに成功したのだった。
「くそっ! 謀られたぜ、俺たち!」
「憲兵なんかかまうもんか! やっちまえ!!」
オスカーは秀麗な顔を殴られて腫らしていたが、にやりと笑って、「ウーリ! 今だ!!」と叫んだ。
突然、何十もの雪玉が頭上を飛んできて、実業学校生たちに襲い掛かった。固く丸められた雪玉は実業学校生たちの頭や顔に命中して弾けた。雪が目に入り、敵の多くが叫び声をあげながら顔を覆った。
雪玉から逃れたヴァヴェルカや実業学校生たちも足元の雪をかき集めて応戦しようとした。だが、オスカーが一人で戦っている間、ウーリの指揮で士官学校生たちは物陰で雪玉をたくさん作って準備していたのだ。豊富な補給に助けられて、たくさんの雪玉が一斉に実業学校生たちをめがけて飛んで行った。オスカーも殴られた痛みも忘れて雪玉を敵にいくつも投げつけては命中させた。
実業学校生たちは押されて、どんどん後退していった。
士官学校側は実業学校生たちを大通りへ抜ける路地へ追い詰めた。激しい雪玉攻撃に息もつけずにいた敵はその抜け道を幸いとばかりに逃げ出した。

士官学校生たちは実業学校生たちが退却するのを見届けると、彼ら自身も早々に立ち去った。マルティンは凱歌を上げたがっていたが、オスカーに首を引っ張られて仕方なしに走ってついて行った。
「なんでだよ、もうあいつら逃げて行ったのに」
ウーリが答えた。
「あいつらの逃げて行った路地の先に何があるか、知らないの? マルティン」
「何があったっけ…? あっ、そうか! 憲兵詰所!」
マルティンは先を走るオスカーの後姿を驚嘆の思いで見た。オスカーを囲むようにして、士官学校生たちはみな、腹を抱えて笑いながら走って行った。

 


Ende

飛ぶ教室 エーリヒ・ケストナー

ドイツの代表的児童文学のひとつ。寄宿学校を舞台に、少年たちの冒険と悩みを「メランコリーとユーモアを絡めて」描く。

元気でいたずらっ気たっぷりな少年たちにも、仲間にも打ち明けられないほど大きな悩みがある。それを信頼や勇気、愛情の力で克服していく姿は爽やか。子供だった頃のことを忘れていない、温かい心の大人の存在も魅力的。

実業学校生とのけっこうエグイ喧嘩のエピソードをこの物語から拝借しましたが、一部を変更しています。

また、少年たちの名前も流用してますが、このお話に登場してもらうにあたり、ジョニーとマティアスの性格と役どころをマルティン一人にまとめてしまっています。

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