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むかしむかし、あるところに郷士のハンスという男がおりました。ハンスはかつてキルヒアイス大公というりっぱなお殿様の部下として聖地で戦った勇敢な戦士でした。しかし、良き騎士であったキルヒアイス大公は若くして戦で亡くなり、主を失ったハンスは失意のうちに故郷に戻ったのでした。
「あーあ、どこかに俺が仕えるにふさわしい騎士はおらんのか」
今日もハンスは親友のビューローの館で管を巻いておりました。ビューローも良きキルヒアイス大公のもとで共に戦った勇敢な戦士でしたが、今は故郷の館で平和に暮らしておりました。
「あのような立派なお方は二人とおるまい。夢のようなことを言っていないで、現実を見てどこぞの殿に仕官してはどうだ」
ハンスは食客としてビューロー家の領地内で差配を務めたり、揉め事があれば調停に乗り出したりしていました。しかし賢く領地を治め、奉公人にも恵まれたビューロー家には聖地帰りの戦士が腕を振るうような荒っぽい揉め事など皆無に等しく、ハンスの毎日は穏やか過ぎるものでした。
―ハンスほどの戦士がこのような片田舎で無聊をかこつなど世のためにもったいないことだ。
ハンスは武勇優れた頼もしい男だしビューローは親友をとても信頼していました。お仕えするのに良い騎士を早く見つけてほしいとビューローは心から願っておりました。そもそも強面のいかにも戦士らしい熊のような男が、平和な領地内を意味もなくふらふらしているのもあまりいい気がしません。
「別の世ならば俺たちは軍人として組織の歯車のひとつになって、問答無用で別の提督の部下にさせられるところだが」
ビールを飲む合間にビューローが首を振り振り時空を超越したことを言いましたが、不満でいっぱいのハンスには聞こえませんでした。
「卿の言う通りキルヒアイス大公ほどの方はおらんだろう。だから大公並とはいかずとも、少し劣るくらいでも構わん。せいぜい精いっぱいお仕えするさ」
「亡きキルヒアイス大公のご友人であらせられた公爵さまの許へ行けば、きっと良い仕官先を世話してくださると思うが」
ビューローはもう何度目かになる助言の言葉をハンスに言いましたが、ハンスはいつも通り鼻を歪めて嘲笑いました。
「もとはと言えばキルヒアイス大公が亡くなったのは公爵のせいなんだ。世話になるなどやなこった」
この国の皇帝はまだ子供で、摂政である公爵さまが国を治めておりました。周辺にはまつろわぬ民が跋扈して戦も絶えず、公爵さまは国を治めるためにあらゆる優秀な人材を集めているというもっぱらの噂です。自薦他薦問わず履歴書を持ってお役所に行き、晴れて有益と認められれば身分にかかわらず取り立てると聞きます。また、そのために公爵さまの部下がリクルートして国中を回っているとも、この地方の領主であるビューローは伝え聞いておりました。
「今度、その人材派遣屋が馬上槍試合を開催すると言う噂だ。卿も参加を申し込んではどうだ」
「なに、馬上槍試合が開かれるのか…!」
ハンスは公爵さまの世話になる気はないものの、試合と聞いては戦士の血が疼きます。乗り気になったハンスの様子にほっとするのを申し訳ないと思いつつ、親友のためにもこの試合がうまくいってハンスの再就職が成功することを祈らずにはいられないビューローでした。

その日は降水確率80%で雲が多く午後から雨がぱらつき、梅雨前線の活動が活発となった影響で夕方から雨脚が強まるとともに雷が鳴る天気となりました。外は土砂降りでも館の中にいれば快適この上ないものです。日中張り切って試合の稽古などをしていたハンスは夕食の後、チロチロと火が焚かれて居心地の良い暖炉の前でうたた寝をしていました。
居眠りするハンスの耳に、豪雨と雷鳴のさなかに館の扉を叩く音が聞こえてきました。主のビューローは会合のため町に出かけてしまっており館にいません。ハンスは留守を預かった身として盗賊や不審者の訪れがあれば彼らを撃退しなくてはなりません。というか、そのくらいしないとただ飯ぐらいのやっかいな居候になってしまうことをハンスも良く気づいていました。
まだ扉は強く叩かれています。まさか盗賊がわざわざ案内を乞うこともあるまいと思いつつ、一応用心してハンスは扉の前へ行きました。
「こんな嵐の夜に何者だ!」
表にいる者は更に扉をガンガンと叩いて答えました。
「インターフォンもない中世なんだ! 怪しい者ではない! 扉を開けろ!」
こんな口の利き方をされて素直に言うことを聞くハンスではありませんでしたが、扉を開けないと話が進まないので渋々、いつでも武器を振るえるように用心して扉をあけました。
途端に外から大きく扉が開き、そこには豪雨の中、びしょ濡れになった男が立っていました。
「この家の主にお目にかかりたい」
男の言葉が終わると同時に闇夜を斬り裂く稲妻が天をよぎり周囲は一瞬、真昼のように明るくなりました。そのわずかな瞬間にハンスは扉の前に立つ男の顔をはっきりと見分けたのでした。
それはこのような鄙には稀な優美な細面で、強い光りを放つ綺麗な瞳をした美しい彫刻のような青年でした。後ろに若い従者を従えた青年はずぶ濡れながら立派な服装をしております。青年は当然のように従者に濡れて重たいマントを預けると、冷たい目でハンスをじろりと見ました。
「卿はこの家の主、ビューローか」
「…いや、俺はこの家の食客だ。主は今夜はあいにく町に出ている」
「では、主が戻るまで待たせてもらおう」
青年の場違いなまでの美々しさにハンスはかえって不信の念を抱きました。
「悪いが、主がいない間に余所者を館に入れるわけにはいかん。厩に行ってもらえるか」
青年の側に控えていた従者がそれを聞いていきり立ちました。
「何を申すか! 我が主君のような立派な騎士に向かって厩などと無礼だぞ!」
「立派な騎士と言うが馬はどうした。馬がいない騎士などおらん」
「この泥だらけの様子を見て分らぬか! ここへ来る途中の川が氾濫して馬をやられたのだ! 領地内をしっかり整備しろと主に伝えろ!」
従者がそのように反論したので、領内の川が氾濫しやすいことに日ごろから気づいていたハンスは反論出来ずに黙ってしまいました。その隙に主従は館内に入り込み、暖炉の前で雨を払い、身体を暖め始めました。
「エミール、この者の言うのももっともだ。我々の所持品は泥の中だし、IDカードもなくてはどこの馬の骨とも証明できん。乾いた場所なら厩でも構わんさ。主が戻るまでそこで待たせてもらおう」
「ですが、閣下…」
気取らない青年の言葉は聖地でよく聞いた戦士の言葉遣いを思わせました。なにより、青年の身のこなしは武人らしい佇まいに感じられて、ハンスは少し態度を改めました。
「無礼があったとしても勘弁願いたい。留守を預かる身としては用心するに越したことはないんでね。ひとまず身体を乾かしてビールでもどうだね」
ビールと簡単な食事を出せば一応もてなしていることになるし、食堂で一緒に飲めば仮に彼らが盗賊だとしてもずっと見張っていることができる、とハンスは考えたのでした。
急に青年は澄んで美しい瞳でハンスをまじまじと見つめ返しました。そしてまるでハンスの考えを見透かすように「なるほど」、というと従者のエミールに頷き返しました。
「それでは饗応に与ろうか」
ハンスは青年にじっと見つめられて心臓の鼓動が早まったことに気づきました。青年は左右で色が違う不思議で綺麗な瞳をしていたのです。
身体を清めて乾かした主従はどこか品が良く、疑い深いハンスでさえもさすがに彼らが盗賊だとは思えませんでした。それに二人は聖地での戦いの様子や、ハンス同様に実際に戦ったことがある者のみ知ることができる事情をよく知っていました。気がつけばハンスは昔からの戦友に話すように戦場での噂話などを二人に向かって話しているのでした。
色の違う瞳を持つ青年は自分ではあまり話しませんでしたが、時々口を挟む様子から戦場での兵士の動きをよく理解しており、さぞかし名のある騎士なのではと思わせました。
身元を保証することができない、という理由から青年は名を名乗る気はないようです。今ではこの青年はきっと立派な騎士に違いない、と思うに至ったハンスでしたが、酒席で共通の話題で盛り上がった程度で信用するほど初心でもありませんでした。騎士であればどれほどの腕前か確かめたいところですが、外はあいにく台風のような嵐です。
ハンスはよくよく考え、心を決めました。
「主の不在に俺が気ままにあんた方を客室に泊めることは出来んが、今夜は俺の部屋で休むといい。狭いから居心地は良くないだろうが」
「戦場よりはましだろう。ありがたく使わせてもらおう」
青年が穏やかにそう言ったのでハンスはその戦士らしい鷹揚さに感銘を受けました。従者のエミールはハンスが主のビューローの部屋で休むと知って不満そうにしています。エミールが甲斐甲斐しく青年に仕える様子は微笑ましさすら感じさせます。しかしこの際ハンスの計画にとって忠実な従者は邪魔です。
―この男は片付ける必要があるな。
ビールを飲み干しながらハンスは静かに考えました。

ハンスの部屋は屋根裏部屋にありますが、主のビューローの心遣いが行き届き、清潔で広々としていました。ハンスのような大柄な戦士の体格を余裕で乗せられる大きなベッドが部屋の中心にあります。真っ白なシーツはダニがいたことなどなく、藁のマットレスは二段重ねの贅沢なもので、いつでもふかふかでとても寝心地の良いベッドです。
青年はこの快適そうな空間に案内されて意外そうに眉を上げました。
「卿の部屋を奪って悪いな。しかしいい部屋だ。主のビューローは卿をだいぶ重宝しているようだ」
どうやら主に信頼されている食客としての印象を青年に与えたようです。ランプを持って青年を部屋に案内したハンスは親友に感謝しつつ答えました。
「ビューローと俺は共に聖地で戦った仲だから、ありがたいことに俺を優遇してくれている。俺もその知遇に答えようと奴の領地を誠心誠意守っているつもりだ」
「ほう…。だがここは平和な土地のようだ。卿のような戦士が必要とされることはそうそうあるまい。毎日退屈ではないか? また戦場働きをする気はないのか?」
まるで心を見抜いたかのような青年の言葉に、ハンスは驚きを隠して言いました。
「そうだとしても、その時は俺がかつて仕えたような、勇敢で知略に富み、優しく情に厚い立派な騎士のもとで戦いたいと思っている。あのように立派なお方は二人とおるまいが」
「…ふん、ここから聖地までの間でそんな騎士などには一人として出会ったことなどないな。そのご立派なお方はどうしたのだ?」
「無念にも戦死されたのだ…。上官を庇って…」
「上官を庇って…? それは誰だ…?」
言うつもりのないことを言ってしまったハンスが思わず言葉に詰まっていると、青年は皮肉そうに笑って首を振りました。
「いや、いいさ。ご立派な主君を亡くした戦士の新たな主君になる男は大変だな。何かと比べられてやりにくそうだ」
「そんなことは…」
「お休み」
戸惑って反論しようとするハンスの言葉を青年はそう言ってぴしりと遮ったので、ハンスは部屋を出ました。嵐がやんで鎧戸の隙間から月明かりが差しているのが分かりました。

真夜中になってもまだ残る風が強く吹いて木々をざあざあと揺らし、館の鎧戸はガタガタと鳴っています。ところが、しんと寝静まっているはずの館の廊下を歩く人影がありました。手に大きな剣を下げて本来ならみしみしと軋む廊下も、風のお陰でぐっすり眠る者には聞こえないでしょう。
人影はある部屋の扉をそっと開け、用心深くベッドに近づきました。鎧戸から月明かりがうっすらと差し、暖炉の熾火が微かな光を投げる中、剣がそれらの光を受けて鞘から現れました。
剣を持つ者はしかし、ベッドに向かって振りかぶろうとして慌てて後ろを振り向きました。ベッドの中はからっぽで、しかも背後から殺気が襲ってきたのです。
頭上に刀の刃が降りかかって、ハンスは必死になって剣で防ぎました。刀を強く薙ぎ払ってから返す剣で青年の胴を狙って踏み込みます。しかし、青年はまるで羽のようにふんわりと動き、今いたと思ったのにそこにはおらず、ハンスの剣は空を切るばかりです。
「どういうつもりだ!」
あの美しい青年が驚くような怒号を発し、ハンスの鼓膜にびりびりと響きました。それはまさしく戦士の雄たけびで、ハンスの身体は真の強敵に出会えた喜びに打ち震えました。戦場において敵の中にさえこのようにハンスを心胆寒からしめた者はおりません。青年は右に左に羽が生えたかのようにやすやすと飛び跳ね、ハンスの剣を薙ぎ払い、自在に刀を操り切り込んできます。こんな計画を立てた自分を呪いながらもハンスは負けまいと必死で剣を振るいました。
しかし、とうとう青年の腕前と身の軽さがハンスの攻撃を上回り、その刀は剣を跳ね上げ、剣は音を立てて天井に突き刺さりました。刀の切っ先が間髪入れずにハンスに襲い掛かりました。
青年の構える刀はぴたりとハンスの首筋に擬せられました。
「さて、きさまはこのような茶番を仕組んで、どういうつもりか教えてもらおうか」
ハンスは急いで青年の前に跪きました。
「あなた様を試すようなことをいたしましたご無礼、お許しください…! どうか、あなた様にお仕えさせてください…!」
ハンスの言葉はさすがに意外だったようで、青年は目を見張ってしばらく黙っていました。刀をハンスに向けたまま、青年は少し前に進みました。
「ほう…。剣で脅して強制するような男をおれが部下にすると思うのか。しかもおれの従者を殺した男を…」
「従者は殺してはおりません。猿轡を噛ませて食堂の椅子に縛りつけてはおりますが、怪我はさせていません」
黙ったまま、青年は疑い深そうにハンスを見下ろしていましたが、やがて刀の切っ先をハンスから遠ざけました。
青年は寝るときに衣類をすべて脱いだに違いありません。暖炉の熾火の仄明るい光りの中で、白く陶器のような肌が浮かび上がりました。一糸まとわぬ素裸であることを気にする様子もなく、張りのある背中の筋肉を見せて身を屈め、ベッドの上から鞘を拾いました。そして優雅で滑らかな動きで刀を納めました。それからようやく、椅子に掛けてあったシャツを裸の肩に羽織りました。
そして刀を身体の前に縦にかざしてその鞘の意匠をじっくりと見ました。
「さてさて、手の込んだことをしたものだ。この部屋におれを入れる前から計画していたのだろう。おれの寝込みを襲うつもりなら、何故この刀をベッドのマットレスの下に仕込んでおいたのだ」
「優れた騎士であれば、ふかふかのマットレスの下であろうとも、武器の存在に気づかぬはずはない、と思いました。あなた様を殺すつもりはなかったのです」
「マットレスの下のえんどう豆か…? なるほど、刀の存在に気づけば本物の騎士ということか」
刀を振るった技量と言い、あの身の軽さと言い、青年が本物の騎士であることは間違いありません。青年を試したことに恐れを抱きつつ、ハンスは青年の言葉に頷いて答えました。
「その刀で反撃することができるならば、あなた様が食堂で話されたように本当に戦場を知る騎士か分かると思ったのです」
「ふん、そしておれは貴様の試験に合格したという訳か。それはそれはありがたいことだ」
食堂で話していた時も気づいたことですが、この青年は非常に皮肉屋で冷笑癖があるようです。ハンスは身を縮めて恥ずかしさに耐えました。
「ご無礼いたしましたこと、平にお詫びを申し上げます。どうか…」
「寝呆けていたところを策略に掛かって襲われるとは間抜けな話だ。おれをそんな間抜けにした男をおれが喜んで部下にするとでも思ったのか」
ハンスは言葉もなくとうとう額を屋根裏部屋の粗削りな床の上に擦り付けてしまいました。
―俺はどうやら誇り高いこの方のお気持ちを傷つけたようだ。俺はやり過ぎてチャンスを失ってしまった…。
「おい、火を熾せ。明かりが欲しい」
ふいに青年がそう命じ、ハンスはしおしおとその言葉に従って暖炉の火を大きくしました。しばらくして部屋の中が明るくなりハンスが振り返ると、青年はまるで鑑定するかのように刀をじっくりと見ていました。
「このように鞘を深紅で彩った刀をおれは一度戦場で見た。それはさる戦死した若い騎士が所持していたものだ。あれは墓の中に永遠にしまわれたと思ったが…」
「その刀は私の亡き主君が直属の部下たちに与えてくださったものです。あの方の部下は全員これを持っております」
「全員と言ってもそう多くはあるまい。おれが知っているのはこの館の主、ビューロー、その親友のベルゲングリューン、ジンツァー…」
「ベルゲングリューンは私です。あなた様もあの方をご存知でしたか…?」
「キルヒアイスは同僚だった。あの男が生きて公爵さまのお側にいれば、今頃おれはこんな田舎町をうろつく必要などなかったはずだ…」
その万感の思いが込められた言葉にハンスはすっかりこの青年への疑いを捨て去りました。キルヒアイス大公を良く知る人物ならば誰もが同じ思いを抱くはずだからです。
「これはどうやらキルヒアイスの導きのようだな。まあ、良かろう。部下に一人くらいおれをへこます男がいるのも一興か」
「とんでもございません。―ところで、あなた様のお名前を正式に伺っておりません。どうかお教えいただけましたら…」
青年は今度こそ絶句してハンスをまじまじと見ました。ハンスが真面目な顔で冗談を言ったのではないことを確かめると、なぜかくすくすと笑い出しました。
「まったく、卿はおれの矜持をことごとく挫くつもりらしいな。おれは自分の顔を気に入っているわけではないが、この目はかなり人口に膾炙しているものと自惚れていた」
「恐れ入ります、田舎者ですので…」
とても綺麗な今まで出会ったことがないほど美しい瞳だから、きっと国中で有名に違いないのです。本当にハンスが慌てているのを見て、悪戯心を起こしたかのように青年は笑いました。
「知りたくばおれの従者から聞くがよい。では、お休み」
青年はそういうと、もうマットレスに刀などを仕込んでいない、とても柔らかくて気持ちのいいベッドに楽しそうに潜り込んで、弱り果てたハンスをよそに眠ってしまいました。

次の日、町ではビューローが有名な騎士、ミッターマイヤー卿と共に朝食を取っていました。ミッターマイヤーは親友のロイエンタール卿と共に、公爵さまの部下として国中の有用な人材を探して旅をしていたのです。昨夜、ミッターマイヤーは町に残って馬上槍試合の出場者を集めることにし、一方のロイエンタールはビューローが住む館を目指そうということになったのでした。
ミッターマイヤーは目当ての人物に運よく出会えたことを喜びました。しかもビューローの人柄を直に知ってぜひ自分の部下に迎えたいと申し出たのです。キルヒアイス大公の部下として名を馳せたベルゲングリューンもまた、ビューローの館にいると知り、きっと今ごろはロイエンタールが勧誘しているだろうと言って、ビューローを喜ばせました。
「ロイエンタールも良い部下を得たいと日ごろから熱望している。卿の親友がそのように優れた男ならロイエンタールはすぐに見抜いて部下に迎えるだろう」
ビューローは再び素晴らしい上官のもとで戦える道が開けたことに感謝しました。きっと今ごろ、親友のハンスも同じように幸運に感謝しているに違いないと確信していました。
その確信はハンスが新しい上官にすでにすっかり心酔している一方で、上官の従者の存在に早くも悩まされていると知っても揺らぐことはなかったのでした。


おしまい

 

えんどう豆と騎士

お題診断メーカーでおとぎ話風の物語が出来ました。​

#3つのお題で創作 https://shindanmaker.com/716352 

3つのお題で創作してください
ハンス × オスカーさんに与えられたお題は
「刀」「ベッド」「羽」
です。頑張って混ぜてください。

*注:マットレスの下のえんどう豆

アンデルセンの童話「えんどう豆の上に寝たお姫様」をモチーフにしています。ある日城にやって来た女の子の布団の下に密かに豆一粒を置いたところ、布団の下に何かあったせいでよく眠れなかったと翌朝女の子が言ったので、こんな豆粒すらわかる繊細な感覚の持ち主は本当のお姫に違いない、というお話。

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